
01.日本における人口減少とその要因
日本の総人口は2004年12月1億2,784万人をピークに減少が続き、2050年には、ピーク時から約3,300万人減の9,515万人となるとの推計が国から示されています。
人口の自然減が継続するということは、端的には、死亡が出生を上回る状況が続くということですが、約50年の間に人口の約25.5%が減少するという急激な減少の要因としては、現在の年齢構成と少子化があります。
人口を維持するために必要な合計特殊出生率は2.07~2.08といわれますが、近年は1.3前後の非常に低い水準で推移しています。これに加えて、第2次ベビーブームの1970年代からすでに合計特殊出生率が2を切っていたことから、団塊の世代以降のシニア層と比較して現在の出産可能年齢にある女性の数は少なく、出生数は2023年に72万人台となっています。
一方、人口構成において大きな割合を占める団塊の世代前後の人々が高齢となるなか、2023年における死亡者数は157万人あまりにのぼりました。
高齢化率が30%に迫る現在の日本の人口年齢構成、及び合計特殊出生率の劇的な改善も見込めない状況からは、人口の減少と更なる高齢化の進展は避け難い未来といわざるを得ないでしょう。
02.人口減少と少子高齢化が社会にもたらす影響
では、人口減少と少子高齢化が進むと私たちの社会にはどのような影響が出てくるのでしょうか。
一つは、一定の地域内の人口が減少するこよによって、地域内において様々な社会インフラが維持困難となる問題です。
人口が減少することによって商圏として成立しなくなったエリアからは、小売店をはじめ様々な業種の企業が撤退し、これが人口の社会減を加速させます。こうして極端に人口密度が小さくなった地域においては、スーパーや公共交通機関はもちろん、医療、介護、行政サービスさえも維持することが困難となります。
住み慣れた地域で暮らし続けたいという人々の願いを、如何にまもっていけるのかが課題となります。
もう一つは、少子高齢化によって進行する生産年齢人口の割合の低下が招く社会全体におけるサービスの供給不足の問題です。
日本の総人口は、今後も減少しますが、この人口減少(需要の減少)は、生産年齢人口の減少と比較すると小さく、社会におけるサービスの需要はさほど減少しない一方、それを供給するための労働力が不足するという状況が招来されます。
この問題に関しては、「うちは高い給料を払ってひとを確保できるから、関係ない」というような個別の競争に陥ることなく、外貨の獲得源である輸出産業をも維持しつつ、国内需要に応えるだけのサービス供給が維持できるのかという、大局的な視点から対策を講じる姿勢を官民で共有することが重要となるでしょう。
03.人口減少と少子高齢化が招く課題への社会の対応状況について
一定の地域内での人口の減少である過疎の問題については、人口が増加を続ける時代においても国内で少なからずみられる現象でした。ただし、この間のそれは局所的であり、基礎自治体内での負担によって過疎エリアの需要を満たすことが可能、若しくは、当該エリアの住民にとっての生活圏内にその生活需要や就労先を代替するものが存在するという場合が多かったのではないかと想像されます。
しかし、今後進展するであろう人口減少下での過疎については、その広範化により、当該エリアの住民の生活圏において代替する物が存在しない状況や、基礎自治体による財政的負担やサービス供給がもはや不可能といった状況が危惧されます。
このような状況と、生産年齢人口の減少による労働力不足からくる社会全体のサービス供給不安に対し、現在、ITなど電子化に対応するための行政・民間の組織変革推進(DX)、外国人労働者の受入れ要件緩和、高齢者雇用の推進など、様々な対応策の推進が国を挙げて行われています。
例えば、医師のオンラインによる遠隔診療導入などは、供給側のサービス供給力の向上に寄与するものですし、医療・介護における病院施設から居宅への流れは、需要の低減に寄与するものであるといえます。その他、行政や民間企業における手続きのオンライン化や、レジの無人化、小売店舗の無人化、紙の請求書発行の有料化など私たちの日常生活の周辺でも様々な変化が生まれています。
04.大きな変革期に必要となる適切な状況把握と判断
社会では上記のような対応が進むのに加え、高齢化への対応から、年金や医療の制度改正も今後大きく議論されるでしょう。
未だ経験したことのない長期的な人口変動期を迎え、また、Society5.0とも称される情報技術の変革期とも相まって、私たちの社会は大きく変化していくでしょう。
変化の大きな時代には、これまでの常識や経済的価値判断だけでは適切に評価しきれない新たな制度やサービスが出現しますが、このような状況下で人生の選択を適切に行っていくには、社会状況の十分な把握とそれに基づく合理的な判断が必要となります。
05.社会インフラとしての後見制度の重要性
私たちが、日々の生活において、又人生において、適切にその選択を行うには、十分な状況把握と合理的判断が重要となります。しかし、すべての人にこれら素養が備わっているわけではなく、支援や補完を必要とする人々が存在するのも事実です。
論理的思考の過程を高校生が学習する「探求」などがその例ですが、なかでも、今後も増加するであろう高齢者について、その選択や判断を支援・補完することにより尊厳ある生活を送り続けるための社会制度及び資源の充実が、超高齢化社会において重要となります。
人が尊厳ある人生を送れるよう、医療や介護などのサービスを主体的に選択できるための支援の充実は、生産年齢人口が減少するなかにあっても確保すべき社会インフラといえるでしょう。
その中核を担うのが、後見制度であり、専門職後見人及び市民後見人の確保とその質の更なる向上が求められます。
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この記事の執筆者
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弊所は、高知県高知市中心部にて相続、遺言、後見といった家族法関係の専門事務所として、主に個人のお客様からのご相談に対応させていただいております。
高齢化の進む日本社会において、特にその進行が顕著な本県にあっては、弊所の提供サービスは社会インフラとしての価値をも有するものとの自負のもと、すべての人が避けて通ることのできない死の前後において、人の尊厳を守り、そのバトンを後世に繋いでいただくための支援に力を尽くしていきたいと考えております。
弊所の「ライフパートナー」という名称には、報酬の対価としての単なるサービスの供給や恩恵的なサービス提供ではなく、敬意をもってサポートを提供することによって、私たちを人生のパートナーとして感じていただければという一方的な願望を込めております。
行政書士ライフパートナーズ法務事務所
代表行政書士 宅地建物取引士 森本 拓也
TAKUYA MORIMOTO
Profile
1993年3月
高知県立追手前高校 卒業
1993年4月
立命館大学産業社会学部 入学
イギリス留学を経て、行政書士資格取得後公務員として約20年勤務した後、行政書士ライフパートナーズ法務事務所開設。